2014 年 70 巻 1 号 p. 54-66
地盤の熱物性を求める目的で実施される熱応答試験の解析結果に,地下水流動や土壌水分が与える影響を定量的に評価するため,地下水位および浸透流量が調整でき,熱応答が測定できる室内実験装置を製作し,熱応答実験を実施した.飽和帯が卓越し,地下水流動が無視できる条件下での実験結果を用いて逆解析より求めた熱伝導率を,同様の環境下にある原位置試験より得られた結果と比較したところ,ほぼ同程度の値が得られた.そこで,浸透流量や地下水位を変えて熱応答実験を実施したところ,浸透流量が増大するほど,また土層の飽和度が高くなるほど見かけの熱伝導率が増大した.さらに実験により,地下水位が同じでも,不飽和帯における土壌水分の多い排水時の方が,土壌水分の少ない吸水時に比べて,見かけの熱伝導率が大きくなることが明らかになった.